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アジリティー

ハードルを落とすのは,太っているから?

 ←びっくりな『和菓子』でした。 →やっと紅椿をつかまえた!
夏休みを頂いていて,すっかりブログを留守にしてしまいました。
今回も夏休みは北海道の競技会とセミナーに行っておりました。詳細はまた次回。
さて,今日は前回の患者さんからの質問,本日は第2問め!
 質問2:ハードルを落とすのは太っているからなのか?・・・
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2)ハードルを落とすのは太っているから?
結論から言いますと・・・ちょっと『違います』。
さて,肥満ちゃんがジャンプしたときに,お腹がバーに当たってしまうことはあるでしょう(笑)なーんて冗談はさておき,この都市伝説はかなり流布されており,なかなかやっかいです。
確かに肥満犬がハードル跳んだらバーを落とすかもしれませんが,逆も真なりではありません。
前回の質問1でアジラーさんからもコメント頂いていますので,今回は少々詳しく書いてみます。(ただし考え方は様々ですので,以下に書いたモノが絶対に正しいとは限りません。あくまでも私の個人的見解と言うことを申し添えておきます)

「うちの子はバーを落とすのだけれど,なにか原因が・・・」と,このての質問はとても多く受けるのですが,診察しても異常が無く「たぶんハンドリングミスでは?」とお答えすると,とても機嫌の悪くなる方々がいます(笑)。ハンドリング・ミス以外は,トレーニング・ミスや身体的なトラブルとなり非常にたちの悪い原因となるのですが・・・。

さて私の考えるハードルを落とす原因は,可能性の高い順に以下の3つのみと考えます。

 <1>ハンドリング・ミス
 <2>トレーニング・ミス(学習・習得の失敗)
 <3>身体的なトラブル

まず,ここでは肥満を含めた事前に発見できうる持病的な身体的なトラブル(※1)については,事前にクリアーされているとして話を進めます。そうでなくとも3)身体的なトラブルは確率的には多くはありません。
※1:「身体的なトラブル」・・・主に各犬種毎に想定される各種関節炎・形成不全などの関節障害や網膜・視神経異常などの視覚障害。また,単純な疾患で発熱性疾患などの体調不良も含む。(注意疾患)股関節形成不全,レッグペルテス病,膝蓋骨脱臼,靱帯損傷,各種変形性関節症,変性性網膜萎縮症,視神経形成不全,他など

このように原因を分類すると<1><2>はハンドラーに原因があります。<3>は犬に原因があります。ただし,ちょっと困るのが<1>と<2>の原因により<3>が発生してるケースがとても多いことです。もちろん突発的な事故などから<3>が発生することはあるのですが,とかく<3>の問題が出てくると『遺伝』や『血統』『体質』『事故』のせいとなる事が多いです。しかし現実はそうではなく,相当の確率で<1><2>が関与しています。同じハンドラーが複数頭トレーニングおよびハンドリングすると,その複数頭の犬が同一箇所を痛めているケースが多々あります。その様な場合に「アジリティーをやっているから仕方がない」的な発言をされる方もいらっしゃるのですが,そんなことはありません。近頃,マッサージなど盛んに行われるようになってきて,とても良いことだと思うのですが,本来マッサージは筋肉疲労などの回復を助けるのが目的で,故障箇所の対処療法がメインではありません。まずは,トラブルが出ないようなハンドリングやトレーニングを心がけましょう。

では,それぞれの原因についてみてみます。

<1>ハンドリング・ミス
ほとんどのバー落下はこれが原因と考えています。
アジリティーはドッグスポーツですが,人間のスポーツでもあります。ただ一般のスポーツ・競技とは少し違い,犬との共同作業による競技のため少し複雑になります。犬たち自身モノを考えて動きますので,競技中のハードルなどが落ちたときなどの失敗時に,私も含め人はとかく他者,すなわち犬や外環境のせいにしたがります(このようなことを他責といいます)。ですのでハードルが落ちた時など,どうしても「犬がハードルを跳ぶことを覚えていない」とか「うちの犬は落とすクセがある」「うちの犬は目が悪いのか?」など他責になりがちです。「優秀なスポーツ選手ほど自責能力(※1)が高い」と言いますから,客観的評価はもちろん重要ですが,私は自身の自責能力も極力高めたいと考えています。
 ※1)自責能力:物事が失敗した際にその原因を自分自身に求め,より前向きに物事を考える能力
当院の診察・トレーニング方針で「犬はとてもシンプルな生き物なので,犬の動きは100%ハンドラーの行動の結果である」と言うものがあります。簡単に説明すると,犬達の行動は100%人間が指示しているものであると考えましょう・・・ということなのですが,これは当院のスタッフや一般の飼い主さんへの指導方針です。例えば散歩中にバイクなどに吠えついてしまう犬は,実は「ハンドラー(連れている人間)がバイクに吠えるように指示を出している」と考えます。もちろんこの場合ハンドラー本人は,まったく指示しているつもりはありません。これは,アジリティーの場合にも同じ事が言えると考えます。ですので私の考えとしても,ハードルが落下した場合,それはハンドラーが意図していようがいまいが「ハンドラーが指示したとおり犬が行動を起こした結果,落下したものである」と常に考えるようにしています。

では『ハンドリング』について考えてみます。ここは少し難しい知識も必要になるので,読み飛ばしてください。獣医界において『犬のハンドリング』といえば『犬の保定(動かないように抑えること)』を意味しますが,アジリティーにおけるハンドリングとは「犬の操作」でしょうか。この犬の操作については,私の考えでは4つの操作方法があります。1)命令,2)依頼,3)条件反射,4)無条件反射の以上4つによる操作方法があると考えています。1)と2)の線引きは難しいですね。もちろん1)や2)を作り上げていくのには,3)4)を利用していくのは,言うまでもありません。私の場合は基本全てを用いますが,メインに使用するのは2)3)4)で,1)は滅多に使いません。

さて,私が競技者としてハンドリングの際に考慮しているポイントをいくつか挙げてみました。

 1:ハンドラーのポイント
  ハンドラー自身の移動速度,停止速度,立ち位置,姿勢や体符,犬との距離
  コマンドの種類や発信タイミング,ハンドラーの訓練技術,自身の反射速度など

 2:環境上のポイント
  フィールド性状(芝,土,砂など),屋内外,日光の入り方,明るさ,気象条件,
  障害物の色・素材,ジャッジの位置,コース特性,コース上のライン取りなど

 3:犬のポイント
  ハードルへの進入角度と進入速度,犬の精神状態(恐怖,沈鬱,冷静〜興奮など)
  各障害に対するトレーニングの習熟度,経験度,犬のクセ,利き足など

私の場合,以上のことを考慮してハンドリングを行います。
これらの条件が全てクリアーされてはじめて,コース上でのハードルが落ちること無くクリーンランとなりますので,クリーンランが出来なかったときはいずれかの問題と考えます。また,上記のポイントは,事前に対応して馴れさせたりトレーニングにより修正可能なものもあります。その場合には,このリストから除外できるように準備はしておきます。

<2>トレーニング・ミス(学習・習得ミス)
次いで問題になるのが,上手く教えることが出来ていないと言う状況です。ここでも捉え方によっては,自責としても他責としても考えられる事なのですが,私の場合にはここでも自責的な視点です。また,私達の場合には犬はとても真面目で素直という視点を基本にしています。ですので,私の考えでは,犬たちは楽なことを選択することはあっても,ズルをするとか悪いことをするということはありません。
物事を犬に学習してもらう際に,学習する側に責任があるのか,それとも学習をさせる側に責任があるのかと言うことを十分に考慮します。当然,IQの高い人間,すなわちハンドラーに学習時の全責任があります。犬が学習できない場合には,犬が悪いのではなく,そのハンドラーにトレーニング・訓練技術が不足していると考えます。

ハンドラーと犬が相性が悪く「犬がアジリティーを上手くならない」とか「成績に結びつかない」という話を耳にすることがありますが,成績については一概には言えませんが,私だったら『相性が悪い』のではなく,ハンドラーにアジリティーやトレーニングの技術が不足していると考えます。げんに紅椿が成績も出ず伸びないのは,単に私のアジリティー技術やトレーニング技術が未熟で紅椿の持っている,高い能力を上手く引き出し学習させることができていないと言うことです。以前オーストリア代表チームの監督だったベルント氏に言われたのはそういうことですね。まあそうは言っても,それを習得していくステップがとても楽しいのですが。

たまに競技会などで,ハードルの随分手前からジャンプしてハードルに落下したりする犬を見かけますが,コースの都合上たまたまそうなったのなら仕方ないですが,2回目以降の発生があれば学習ミスの可能性が高いです。

このようなケースは,ハンドラーがハードル・ジャンプを適切に犬に教えることが出来なかった結果,正しいジャンプを犬が習得できなくなってしまった状況,または間違ったジャンプを学習してしまったと言うことです。このような場合には,やはりハードルのバー落下頻発や不整ジャンプ(※2)が多発します。
※2:「不整ジャンプ」・・・ため跳び,高跳び,ウサギ跳び,踏切位置の異常
この際の対策としては,ハードルおよびジャンプについての再学習が必要です。「ハードルは飛び越える障害」と言うところからやり直し「ハードルのバーは落とさない方が良いモノである」と言う感じに学習発展させていきます。
じゃがーなどプードルたちは,放っておいてもハードルの失敗はとても少ないのですが(美しく飛ぶ練習はしましたけど・・・これについてはまた次回),ラージクラスとなるとハードル・バーの落下はとたんに頻発します。紅椿のハードルバーの落下は随分少なくなってきているので,周囲の方からも体が小さいのに何故落とさないのか?と良く聞かれます。
トレーニングの方法も多岐にわたるため,一概には言えませんが,じゃがーや紅椿の方法で一つアドバイスをすると「ハードルは絶対落としてはいけないモノ」とは私は教えません。どちらかというと,ハードルバーは落としても問題ないモノと教え,『落としても構わないけど,落とさないともっと良い』と教えています。

さて,今回のブログは原稿を書いていたら,ずいぶん難しいことまで書いてしまって膨大なものになってしまいましたので,そこからいくつか抜粋してみました。皆さんの多少のお役に立てれば良いのですが!

(すー。>^_^<
ご興味のあった記事があれば拍手をお願いしまーす。
今後の参考にさせていただきまーす。




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